紗夢猫である。私にとって三度目の青山の夏、凛太郎は二度目の夏。
 最初の夏は、梅雨どきにセーターを引っ張り出して着るほど寒い日があり、夜半は冷え込むこともあり、夏中、ほとんど長袖パジャマで過ごした。
 二度目の夏は、去年より暑いなと思いながらも、やはり梅雨どきには寒い日もあり、凛太郎と一つベッドで共に寝るという悪しき?習慣を崩すこともせず、夜半は冷え込むので、仲良く寝る日が続いた。ふたりバラバラに寝たのは1日だけだった。
 
 しかし、今年はあまりに暑い。ここ五日ほどめちゃくちゃ暑い。とうとう昨日炬燵を片付けた。梅雨どきの寒い日は今年は無いと見た。
 三日前の夜は、共に寝る凛太郎に腕(かいな)を貸さず、あんた勝手に寝よしと自分だけ眠りに入ろうとしたら、せつなさそうにクーンクーンとしつこく鳴く。どうして欲しいのかわからず、シッコかと思い連れていっても違う。このクソ暑い夜でも私にくっついていたかったようで、抱いてやったら鳴くのを止めた。どのみち寝てしまったら、凛太郎は自分の気持ちの良い場所に移動するのが常なのだが、寝しなはくっついていたいらしい。そうか、寝しなはお母さんにくっついて寝ていたいのだな、暑いけれど、まっいいか、そう思った三日前。
 そして昨夜も暑いけれど、最初はくっついて寝ていた。夜中にクーンクーンと鳴く。鳴いても私が起きないので舐め始めた。今夜はシッコだろうと連れていったら違う。またベッドに連れ戻り、私は眠りに入ったが、しばらくしたらまた鳴くは舐めるは、なんとしても私を起こす努力をしよる。かわいい声で鳴くので怒ることもできず、どうして欲しいのかもわからない。何より私は眠い。

 だいたいベッドから降ろすと、上げてくれ上げてくれとうるさいヤツなので、私の選択肢の中には降ろすということは入っていなかったが、あまりにうるさく(と言っても可愛い小さな声で静かに鳴いているだけなのだが、しつこい)私の睡眠の妨げになること甚だしく、ついにベッドから降ろした。オシッコやったら勝手に行ってきてと言い、帰って来たらまた鳴くやろなーと夢うつつで思いつつ。
 ところが、ついに鳴くこともなく、私はその後、朝までぐっすり眠った。結局、凛太郎も暑くてベッドから降りて一人にいや一匹になりたかったようだ。私が目覚めた時、彼は床の間に鎮座していた。

 ちなみに凛太郎は、ベッドに飛び乗ることは出来ないが、降りることは出来るので(最近やっと降りられるようになった)、そういう時は勝手に降りてくれと思うのだけれど、降ろしてもらうのが常となっているので、母に頼んで降ろしてもらわなければいけないと思い込んでおるのか、起こす。夜中に起こすのは堪忍してくれー、どうか勝手に飛び降りてくれと母は切に思うのである。